①の続きです

感染
MBSの参入によって感染はかなり減速しました.MBSの2マナクリーチャーがかなり弱いからです.このセット の新たな2マナクリーチャー(《解剖妖魔/Flensermite(MBS)》)は《疫病のとげ刺し/Plague Stinger(SOM)》や《胆液爪のマイア/Ichorclaw Myr(SOM)》,《荒廃のマンバ/Blight Mamba(SOM)》 と比べるとかなり劣ります.新セットの感染クリーチャーはかなり頑強なボディを持っており,その分コストが高くなっています.《荒廃後 家蜘蛛/Blightwidow(MBS)》や《災いの召使い/Scourge Servant(MBS)》は序盤の感染クリーチャーと比べてかなり殺すのが難しいでしょう(除去を絡めても).また,感染クリーチャーは白にも広がったので,黒緑以外のカラーコンビネーションで感染デッキが組める可能性が広がりましたが,残りの2パックからの支援はかなり少ないです.

感染デッキにとって重要なカードは《病気の拡散/Spread the Sickness(MBS)》と《荒廃後家蜘蛛/Blightwidow(MBS)》です.

《病気の拡散/Spread the Sickness(MBS)》は新たな,そして強力になった《金屑化/Turn to Slag(SOM)》で す.強力になったとする理由はいくつかありますが,一番重要なのは,基本的にどんなクリーチャーも対処できるようになったことです.また,ゲームが進むと,-1/-1カウンターが置かれているクリーチャーの数も多くな るでしょう.それらのクリーチャーを除去できる可能性もあります.《病気の拡散/Spread the Sickness(MBS)》に付いている増殖効果は,追加のクリーチャーを除去できて,対戦相手の毒カウンターを1つ増やせるので,ほぼカード1枚分の価値があります.

《荒廃後家蜘蛛/Blightwidow(MBS)》は《嚢胞抱え/Cystbearer(SOM)》の穴埋めとなります.他の感染クリーチャーになら対処できる大抵の除去呪文が効かず,コンバットで対戦相手のクリーチャーに勝つのに十分な大きさを持っているからです.《荒廃後家蜘蛛/Blightwidow(MBS)》の唯一の欠点は4マナという事で,大抵のデッキでは既にこのマナ域は 過剰気味です.

消耗戦に強いカードも数枚あります.《病的な略取/Morbid Plunder(MBS)》 と《腐敗狼/Rot Wolf(MBS)》です.前環境だとカードアドバンテージの源となる のは《死体の野犬/Corpse Cur(SOM)》だけで,これが取れないと対戦相手を磨り潰す様な動きは不可能でした.これら2種のカードの追加によって,大抵の対戦相手に対して,(消耗戦において)有利に立つことができるようになりました(特に重要なのはこれらのカードがスモールエキスパ ションに属していて,故により頻繁に現れることです).

また,戦闘をかなり難しくするユーティリティ・スペルもいくつか追加されました.《悪性の傷/Virulent Wound(MBS)》,《不自然な捕食/Unnatural Predation(MBS)》,《ピスタスの一撃/Pistus Strike(MBS)》です.《悪性の傷/Virulent Wound(MBS)》 はかなり強化された《煙霧吐き/Fume Spitter(SOM)》で,インスタント・タイミングで打てるようになったと共に,このアーキタイプの最終目的(対戦相手の毒殺)の達成にも貢献します.《不自然な捕食/Unnatural Predation(MBS)》は,チャンプブロックをよりリスキーなものにしま す.特に《胆液爪のマイア/Ichorclaw Myr(SOM)》や《災いの召使い/Scourge Servant(MBS)》といったパワーの大きいクリーチャーと組み合わせると強力です.《荒々しき力/Untamed Might(SOM)》と《不自然な捕食/Unnatural Predation(MBS)》のコンボはゲームを終らせる新たな組み合わせです.《ピスタスの一撃/Pistus Strike(MBS)》はこの3つの中で最も限定的なカードです.空飛ぶボムが闊歩するシールドではベストなカードですが,ドラフトにおいては, 大抵の場合ただのサイドボードに過ぎないでしょう.

感染デッキで使われる2マナのカードがSOMではペアとなって現れることは重要です.しばしば,次のような組み合わせでパックから現れます.《荒廃のマンバ/Blight Mamba(SOM)》と《疫病のとげ刺し/Plague Stinger(SOM)》, 《疫病のとげ刺し/Plague Stinger(SOM)》と《胆液爪のマイア/Ichorclaw Myr(SOM)》,《胆液爪のマイア/Ichorclaw Myr(SOM)》と 《闇の掌握/Grasp of Darkness(SOM)》,などです.白を含んだ感染をドラフトしている場 合には,これらの組み合わせが隣接した感染ドラフターを支援します(注)白の感染クリーチャーには《ノーンの僧侶/Priests of Norn(MBS)》,《枝モズ/Tine Shrike(MBS)》がいますが,白を含んだ感染デッキはこれら加えて,《胆液爪のマイア/Ichorclaw Myr(SOM)》や《ファイレクシアの消化者/Phyrexian Digester(MBS)》,《死体の野犬/Corpse Cur(SOM)》といったアーティファクトクリーチャーにより依存 することになるでしょう.強力な白+αの感染デッキを完成させるためには,2色目(黒か緑)の決定がかなり重要になります.

恐 竜
赤緑で組んだこのアーキタイプはSOM×3のドラフトにおいてかなりの勝ち組でした.ファッティ(《最上位のティラナックス/Alpha Tyrranax(SOM)》)を大量にデッキに入れて,デッキの中心となる アーティファクトの枚数を最小限に減らすという構築が可能で,相手のデッキに大量に入っているアーティファクトを腐らせることができたか らです.このデッキは,中速デッキと金属術に対して強い一方で感染デッキを苦手としていました.マナカーブが高いため,軽い除去(《感電破/Galvanic Blast(SOM)》・《燃えさし鍛冶/Embersmith(SOM)》)にかなり依存していたからです.MBSがもたらした優秀なカードによって,このアーキタイプはかなり強力な選択肢となりました.

「恐竜」が得た優秀なカードは
《荒廃後家蜘蛛/Blightwidow(MBS)》
《オーガの抵抗者/Ogre Resister(MBS)》
《ヴィリジアンの密使/Viridian Emissary(MBS)》
《ファングレンの匪賊/Fangren Marauder(MBS)》
と いったカードです.

《荒廃後家蜘蛛/Blightwidow(MBS)》はこのアーキタイプの戦略にがっちりと噛み合うわ けではありませんが,補佐役としてかなり重要な地位を占めます.「恐竜」はフライヤー,感染,序盤のビートダウンに対して脆い部分があり ました.こういった相手に対しては,対戦相手を減速させる《絡み線の壁/Wall of Tanglecord(SOM)》などの特定のカードによって部分的に解決していました.《荒廃後家蜘蛛/Blightwidow(MBS)》は《絡み線の壁/Wall of Tanglecord(SOM)》のように安く拾えるわけではありませんが,「恐竜」に対する脅威のうち2つに対応できます(フライヤーと感染クリーチャー)

《オーガの抵抗者/Ogre Resister(MBS)》はこのアーキタイプにおいては小さめのファッティです.しかしたった4マナで4/3というサイズは,今までは埋めづらいスロットでし た.大抵のデッキには2,3マナの多種多様なアーティファクトクリーチャーを含めたマナカーブを形成しており,ファッティが存在するのは5マナからです.《オーガの抵抗者/Ogre Resister(MBS)》はこのデッキのマナカーブにぴったりフィットします.デッキの動きを滑らかなものにしてく れ,結果ライフは高い水準で安定することになります.

《ヴィリジアンの密使/Viridian Emissary(MBS)》は「恐竜」アーキタイプの様な防御的なデッキにおいていい働きをします.対戦相手のクリーチャーと1対1交換を 取りながら土地を伸ばせるので,対戦相手に攻撃を躊躇わせることができるからです.

《ファングレンの匪賊/Fangren Marauder(MBS)》は非感染デッキに対して目覚しい働きをするので,このセットのベストコモンのひとつです.匪賊のライフゲイン能力は,対戦相手のダメージレースを不可能にします.大抵の金属術デッキは除去を使わずに匪賊を倒すことはできないでしょう.単純に5/5バニラと見ても,《最上位のティラナックス/Alpha Tyrranax(SOM)》と同様効果的なアタッカーです.

《荒廃後家蜘蛛/Blightwidow(MBS)》や《ヴィリジアンの密使/Viridian Emissary(MBS)》に加えて,このアーキタイプにとって《火膨れ杖の シャーマン/Blisterstick Shaman(MBS)》 も大きな収穫です.「恐竜」が苦手としている序盤のフラーヤーや小型クリーチャーによるビートダウンにかなり対処できるからです.《金のマイア/Gold Myr(SOM)》を殺しつつ《オーリオックの模造品/Auriok Replica(SOM)》と戦闘で合い打ちを取る.3マナのクリーチャーとしては破格の仕事です.

コントロール/中速(midrange)
「金属術に頼らないで,単純に優秀なカード(《空長魚の群れ/Sky-Eel School(SOM)》) を大量に運用する」というコンセプト以外に,このアーキタイプには明確な定義はありません.高コストの呪文を多数用いることでカードの質を上げているので,大抵の場合このアーキタイプはコントロール的にプレイされます.このセットのトップコモン(最初に挙げたやつ)以外で,今まで議論されていないカードにも,それぞれのデッキ(訳注:原文はthese decks 「コントロール・中速デッキの中での『それぞれ』だと思う」)で活躍する質の高いカードが何枚もあります.

特に質の高いカードは《血清掻き/Serum Raker(MBS)》と《ファイレクシアの憤怒鬼/Phyrexian Rager(MBS)》,《六角板のゴーレム/Hexplate Golem(MBS)》です.

それなりの大きさと回避能力を持っているので.《血清掻き/Serum Raker(MBS)》は青をベースとしたデッキでは優秀なクリーチャーです.遅めのデッキの勝ち手段として用いられるタイプのカードでしょう.

《ファイレクシアの憤怒鬼/Phyrexian Rager(MBS)》は,それぞれのデッキにがっちりフィットする,というものではないですが,様々なデッキに居場所を見つけるでしょう.他のカードを入れる 代わりにこのカードを入れることでデッキの質を大きく上げることができるからです.《ファイレクシアの憤怒鬼/Phyrexian Rager(MBS)》は中速デッキがプレイするカードの,素晴らしい見 本のようなカードです.低コストのカードが持つ問題点としてデッキの質を上げてくれない(例えば,《モリオックの肉裂き/Moriok Reaver(SOM)》)という点と,ゲームが進むと死に札となる点があります(が,こいつはそうではありません (補訳)).

《六角板のゴーレム/Hexplate Golem(MBS)》は《剃刀ヶ原の打つもの/Razorfield Thresher(SOM)》と同じくかなりの高コストカードです.しかし,比べるまでもなく両者の性能には大きな開きがあり,ゴーレムは打つものと比べてずっとプレイする価値のあるカードです.両者の最も大きな違いはタフネスです.《六角板のゴーレム/Hexplate Golem(MBS)》はずっと除去するのが難しく,大抵のコンバットで 生き延びるでしょう.それこそが7マナの呪文に求められている働きです.ゴーレムはアーティファクトクリーチャーなのでほとんどの除去が効いてしまうのですが,大抵の場合,ゴーレムが出てくるころには相手の除去は尽きて いるでしょう.ゴーレムの大きな欠点として感染や白をベースとしたアグロデッキへの弱さがありますが,それでも大抵活躍できる優秀さで す.

MBSはパワーカードを多数ドラフトにもたらしました.レア及び神話レアには大量のボムがあり,アンコモンにも少なからず馬鹿げた強さをもつカードが存在します. こういったパワーカードの存在はありますが,どのドラフト環境においてもコモン中心で組めて、主流となる アーキタイプが生まれ,それぞれのアーキタイプにおいて重要なカードを知ることが更なる成功に繋がります(注1).本記事で議論した5つのアーキタイプはどれもMSSドラフトにおいてかなり強力なアーキタイプであり,たとえ感染から入って最終的に恐竜になったとしても,大切なのは選べる選択肢を把握しておくことです.
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注) Past all of the power there are a number of common archetypes that will pop up in every draft, and knowing what the important cards to each of them are will lead you to a more successful draft.

Past all of the powerが分からない
Common archetypesはコモンなアーキタイプ=組もうと思って組めるアーキタイプと意訳.前文でレア・アンコの話してるから「コモンで組める」アーキタイプという意味かな?あまり変わらないけど.

コメント

やまだ
2011年3月7日9:02

翻訳お疲れ様です。

Past all of the powerの上手い訳は出てきませんが、前述のrare/mythic/powerful uncommonsがall of the powerなのかなと思います。
なので意訳ですが「ボムはさておき、コモン(カード)のアーキが毎回出るので、それぞれの重要カードを覚えておくとおりドラフトが上手くいくよ」という文脈ではないかと捉えました。

ペンティーノ
2011年3月7日10:07

お世話になります.

やはり前文とのつながりを考えると,
Past all of the power はアンコ以上のカードに言及していて,
common archetypes はコモン中心で組めるというニュアンスですね.

記事中もコモンのカードを解説しています.

ありがとうございました.

re-giant
2011年3月7日17:19

お疲れ様です。
読んでるとドラフトしたくなってきます。恐竜デッキ組みたい。

>が,こいつはそうではありません (補訳)

こういう「書いてないけど実質書いてある」言葉ってありますよね。
やっぱり、はっきり書いてしまったほうが文章が安定します。

ペンティーノ
2011年3月7日21:37

ですね。
前はもっとがちがちにそのまま訳していたのですが、最近は結構足したり引いたりしてます。

解釈が間違っていなければいいと思うようになって、日本語の文章としての自然さの優先度がどんどん上がってきています。次は(補訳)と断らないかも。

YASSSY
YASSSY
2011年3月7日22:54

最近DNを始めました。リンクさせて頂きました。
いつもすごく楽しく読ませてもらっています。

ペンティーノ
2011年3月7日23:38

ありがとうございます。相互させていただきます!

しょっとこ
2011年3月8日17:49

翻訳お疲れ様です!

訳注分については、僕もかなり悩みます、、、
カードパワーが高いボムに対比しての主流(Common)アーキタイプという意味なのか、レア・アンコのレアリティーに対比してのコモン(Common)アーキタイプなのか。

原文ではarchetypesと複数形になっているので、僕だったら主流なアーキタイプ、と訳してしまうかもしれません。
コモンのアーキタイプならば、common’s archetypeと書くような気がして。
ただ、書き手がOchoaなので断言出来ない、、、難しいです。

ペンティーノ
2011年3月8日21:50

ご助言ありがとうございます。

common archetypesは記事中の5つのアーキタイプのことなので、僕も複数形のつもりで訳しました。なので、このcommonには「主流」という意味も含まれていますね。

ただ、記事中の、各アーキタイプで言及しているカードがコモンのみなこと、前文でボムの話をしていることから「コモン」の意味もあるのかなと思いました。

ダブルミーニングかもしれません。

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